棘上筋が肩峰と上腕骨に挟み込まれて痛みが出現するインピンジメント症候群。
初回問診・検査時に四十肩や腱板損傷はその場の挙上動作で痛みが出現しますが、インピンジメント症候群は急性期でない限り一回の外力(挙上動作等)で痛みが出現することはありません。
ですから「痛みを今出してみて。痛い動きをしてみて」と言っても、患者様が困惑するケースもよくあります。
「繰り返しの動作をしばらく行う」と痛みが出現するというのがインピンジメント症候群の特徴なのです。
またスポーツ活動に多くの場合が関係し、発症年齢も四十肩・腱板損傷を発症する人々よりずっと若い傾向にあります。
患者様は「野球の試合の途中から肩が痛む」なんて感じで症状を訴えます。
発症原因は2つに大別できます。
一つ目がOutlet impingement(一次的インピンジメント症候群)で、骨の形などの構造上の問題で棘上筋の通り道が狭くなって生じます。この場合、手術的なアプローチによって通り道を広げることが必要なため徒手療法では治せません。
もう一つがNon-outlet impingement(二次的インピンジメント症候群)で、これは徒手療法で改善が見込めます。
【①後方関節包の硬化・短縮】が生じると挙上動作に伴い上腕骨頭が上方に引っ張られ、肩峰との距離が詰まります。
ですので肩関節内旋ROMを上手く行い、後方関節包の柔軟性を上げると良いですよ。
【②肩甲上腕関節の外旋運動不足】が生じると上腕骨小結節と肩峰の距離が縮まり、インピンジメント引き起こすので、外旋ROMや外旋筋の強化が有効です。
【③骨頭の位置異常】が生じるとやはり、肩峰との距離が縮まりますので、徒手矯正が必要となります。
【④上腕二頭筋腱や腱板の変性】に対しては局所の安静や注射治療がメインとなります。
私達、徒手療法家にできることは①~③です。
つまり肩関節内・外旋可動域を丁寧に作って拡大していき、かつ、インナーマッスルの強化を促すことが2次的インピンジメント改善に重要となるアプローチです。