私はすぐに「これは心臓に負担がかかる際に出現する心筋梗塞発作の前駆症状かもしれない」と思いました。
でも、医者でもない私がそのような事を軽々しく口にできないと思ったので、さらに問診を続けました。
③の散歩コースの違いで関連痛発作がでない理由を調べるため、問診を続けたところ、ある法則に気が付きました。
散歩コースは2つあるのですが、一つは繁華街を通るコース。
もう一つは公園内を歩くコースです。
お話を伺いながら、同じ40分の散歩でも繁華街コースでは発作は起きず、公園コースでよく発作が起きているという法則に気づきました。
なぜこのような現象がおきるのかというと、繁華街コースには信号があり、連続歩行時間が10分を越える前に立ち止まり、心臓を休められていたのです。
一方の公園コースには信号が無く、延々と連続で歩けます。
その結果、この方の心臓の限界である10分を越えて歩き続け、心臓が悲鳴を上げていたのだと思いました。
私は一応、肩こりの原因となる筋硬結があるのか、治療して調べましたが、そのような硬結はありませんでしたので、これはほぼ間違いなく心臓が原因だと思い、本人に循環器内科受診を強く勧めました。
医者ではない私が言っても説得力がないかもしれないと思ったので、患者様が納得できるよう今の状況を真摯に伝え、今日中に受診するようお願いしました。
本人はその時はまだ半信半疑。というのはこの方、若い頃マラソンをやっていたという自負があり、最近調べた心電図検査で異常が無かったからです。
血圧も140位でそれほど高い数値でもない。
「心臓が悪いわけないんだけどなぁ。でも確かに肩こりじゃないよなぁ…」
そんな感じでしたが、私の言葉を信じ、当院の治療後、すぐに街の循環器内科を受診されたそうです。
そこですぐに心臓の異常が分かり、応急処置のための薬が処方され、さらなる精密検査のため近々で日医大の受診となりました。
医者も「良く気が付きましたねぇ。危ないところでしたよ」と驚いていたそうです。
後日、この患者様からお電話を頂き、
「いとひや先生に言われた時は半信半疑でしたが、医者に異常を伝えられた時はゾッとしました。命拾いしました」と仰られていました。